終活 ひきこもりの息子を自立させるまでは死ねない

デジカメの編集画面にいつも笑顔の息子が現れる。「がんばれよ!」と小さく声に出してみる。

息子と妖怪ウオッチ会話

一昨日、妻の定期受診が終わって部屋に戻る前に、留守番の息子にメールを入れて「くら寿司」行きを打診する。

現在の息子を外に連れ出す口実は妖怪ウオッチのポイントがゲット出来る「くら寿司」行きがベターなのである。

スマホを持って店舗の前を通過すると妖怪の現物1つが手に入るらしい。(一緒にドライブ中に詳しく聞いたが上記のことくらいしか理解できなかった。)

(・・・予約投稿欄に今回の記事タイトルが載っていたので文章は"完成"とたものと安心していた。がそうではなくまだ6行しかかけていない下書きの状態だった。いつもの20:00時までに書き上がるだろうか?)

診察から戻ると息子が部屋から飛んで出てきた。受診の途中で何度も留守番の息子とメールを交換している。それでも事故もなく2人揃って戻ってきたのでほっとした表情をしている。

くら寿司行こか」と声を掛けると珍しく頷いた。

「そのままちょっと出かけよう」と言うと着替えをしなければだめらしい。自分の準備や段取り、服装のイメージがありそれが完了しないと息子の心の中では"よしスタート" の合図がなかなか出せないようである。

わたしは「yaのちょっと待っては長いから、ちょっとで30分は待たんとあかん」とぶつぶつ言いながら玄関先で靴も脱がずに立ち尽くすことになる。

息子の全てが愛おしい、全てを受け入れている。

このごろよくテレビや新聞などで若者の死亡記事が報じられる。自死を選択した者や交通事故で命を失った中学生、小学生など、親御さんの気持ちは想像もつかない。

先日も同じような記事を目にして妻に語り掛けた。

「yaは生きてるだけでええなぁ」

ひきこもり歴が長いから考えが幼そうだから、どうしようもない奴 ! と否定しているわけではない。生きてくれているだけで充分なのである。その存在が愛おしい。

15分後に息子は玄関に現れた。白いパナマハットをかぶり淡いブルーのシャツに細身の黒ずぼん(いまはパンツというのか?)、淡いふわふわのショールを肩から垂らしている。ごっつい靴をはく。

ちょっと見は異様な格好であるが仕方がない。人に会う可能性があるのは1階に下りるエレベーターだけである。車に乗り込んでしまえば「くら寿司」まで1直線になる。

店舗前まで5分で到着する。現物の妖怪をゲットらしい。わしたしは何度聞いても要領がよくわからない。妖怪ウオッチを好きなんか?と聞いたがそうでもないようである。

サッカーゲームの方が好きらしくいろいろと語ってくれた。これもゲーム音痴のわたしにはチンプンカンプンである。

現実のサッカーはひきこもっているので出来ないが、本田のファンでテレビ観戦は楽しみにして欠かさない。

先日接戦で逆転勝利した日本代表の試合を問うてみると、「若手が決めて勝っても"ああそう"という感情しかわかなかった、という人がいた。ぼくもそう思った」と、やはり本田が決めなけれは盛り上がらないらしい。

わたしは話題を振って聞き役に徹している。ちょっとぐるっと遠回りして10分ほどのドライブを終える。来週初めに妖怪の種類が変わるという。

息子とまた「くら寿司」へ行く約束が出来た。